赤ひげから銭ゲバまで、医師の世界も色々(1)
地方勤務を希望する医師


 「人生いろいろ」と歌ったのは島倉千代子だが、「人生いろいろ 、会社もいろいろ、社員もいろいろ」と嘯いたのは小泉元首相。まあ、どの世界、どの業界も色々。人も組織も変わる。ただ、変化にも色々あり、変質というといい方に変わるというイメージより逆の方が強いが。
 医師の世界も色々で、医は仁術なのか算術なのか。どちらかに偏りすぎても難しい。バランスが大事ということだろうが、やはり仁術のウェイトの方を高めて欲しいものだ。

地方勤務を希望する医師

 ところで最近は医師の世界も大変らしい。国の医療費削減で、昔のように儲かる職業ではなくなった上、最近は3K職場に分類され成り手も減っているとか。そうなると地方に来る若手医師はますます減り、地方医療は崩壊の危機にある。
 それでも患者はいるから不要な診療科などはない。歯科も眼科も耳鼻科も必要だし、需要はある。
 そこで地方はどうしているかといえば他所からの応援医師、その多くは大学の医学部からの派遣だったり、すでに1線を退いたような医師の現場復帰だったりするわけだが、そうしてでも地方医療を崩壊させるわけにはいかないから診療所も医師も患者も三者三様にやり繰りしながら頑張っている。

 かといって、地方の診療所が成り立たないわけではない。むしろ診療所の総数が減少した分だけ競合が減り残っている診療所に患者が集まってくるから、人手不足の問題を除けば経営的にはそこそこ成り立っている。
 地方のそんな診療所で見かけた40前と思しき医師と会話していて、パラダイムの変化とまでは言えないだろうが、微かな希望を抱いたのも事実だ。
 その診療所は介護施設と提携していて、母の健康状態などを説明したいから、私が帰省した折に寄って欲しいと言われていたので、先月の帰省時に医師と面談。ところが、こちらの健康相談やよもやま話に身を乗り出すようにして耳を傾けるものだからついつい地方医療に関する話などもしてしまった。

「田舎なのにこの診療所は随分患者さんが多いですね」
「そうなんですよ、ここは医師が3人もいますからね」
「地方でもやり方によってはビジネスが成り立つということですね。地方は医師不足が言われていますが、一つは報酬の問題があるのでは。報酬を上げれば地方に来る先生も増えると思いますが」
「報酬は問題ではないと思いますよ。私は大阪出身ですが総合医療をしたくて、希望してここに来ましたから。そういう医師はいると思います」
 えっ、そんな奇特な医師がいるのか、と思ったが、現在の専門化、細分化された医療ではなく、内科、外科、小児科等全般的に患者の相談にのれる医療を目指したいというのがこの医師の考え方のようであり、まだ「赤ひげ」のような医師もいるのだと感心した。
                                           (2)続く



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